Epidermolysis bullosa  表皮水疱症

疾病情報

出生時または幼少期から、手足など外からの摩擦を受けやすい場所に、日常生活でのささいな刺激によって大小の水ぶくれやただれが多発する病気である。重症の場合は爪の変形のほか、口の中、のど、食道などの粘膜にも水ぶくれやただれが生じ、ものが飲み込みにくいなどの機能障害を起こすことがある。

 

国指定難病医療費等助成対象疾病 疾病番号28
18歳未満の患者のうち、「致死性表皮水疱症(ヘリッツ型)」は、小児慢性疾患医療費助成に申請する。

遺伝性について

(a)単純型表皮水疱症

ほとんどが常染色体優性遺伝です。まれに常染色体劣性遺伝を示す病型もあります。

(b)接合部型表皮水疱症

基本的には常染色体劣性遺伝です。

(c)栄養障害型表皮水疱症

常染色体優性遺伝ならびに常染色体劣性遺伝を示す両方のタイプがあります。

(d)キンドラー症候群

常染色体劣性遺伝します。

 

ここで、遺伝の形式について簡単に示します。ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と2本の性染色体の計46本の染色体から構成されています。常染色体・性染色体とも1本は父から他の1本は母から受け継ぎます。つまり常染色体は、同じものが2本ずつあるのですが、優性遺伝というのは、1本でも異常であればたとえ対となるもう1本が正常であっても病気になるという遺伝形式であり、劣性遺伝は父と母から譲り受けた2本とも異常なときにはじめて病気になるというものです。現在、この病気になる原因の遺伝子が次々と解明されており、その遺伝子の異常を検討することで、子供が病気になる可能性を推定したり、出産前に胎児が病気かどうかを診断する出生前診断もすすんでいます。

この病気ではどのような症状がおきますか

すべての病型に共通するのは、前述の通り、非常に軽微な外力(機械的刺激)で、容易に水疱やびらんを生じるということです。生下時や幼少時から始まり、長年にわたって症状が持続することも特徴です。

(a)単純型表皮水疱症

水疱が表皮内にできるため、水疱やびらんの治癒した後に瘢痕や皮膚萎縮を残さない(きれいに治る)ことが特徴です。ケラチン5/14、プレクチンの遺伝子のどの部位にどのような遺伝子変異があるかによって重症度が変化します。この病型の中には、皮疹が手足に限局するタイプや稀な病型として小児や成人になってから筋肉の萎縮を伴うタイプ(筋ジストロフィー合併型単純型表皮水疱症)もあります。夏に増悪して冬に軽快し、また加齢に伴い軽快することが多いです。

(b)接合部型表皮水疱症

治癒するときに、瘢痕は残しませんが、皮膚萎縮を残すことが特徴です。
生まれた頃から水疱やびらんを形成し、頭部の脱毛、口腔粘膜などの粘膜病変を伴い、さらに歯や爪にも症状が現れます。
幽門閉鎖症合併型はα6β4インテグリンの遺伝子変異により発症します。全身に水疱を認め、さらに胃の出口である幽門部の閉鎖を合併します。

(c)栄養障害型表皮水疱症

加齢に伴い軽快傾向が見られるものが多いですが、治癒後の皮膚瘢痕や爪の変形、指趾の癒着をきたすこともあります。ときに、口腔や消化管の粘膜も障害されます。

重症例では、全身に水疱・びらんが多発し、著明な瘢痕を残します。歯や爪、頭髪の異常や、粘膜障害が高頻度に見られ、いろいろな機能障害をきたします。多くが、生涯を通じて難治性です。

 

この病気にはどのような治療法がありますか

局所的治療としては、滅菌した注射針などで水疱の蓋を壊さないように内溶液を吸引します。さらにワセリンを塗ったガーゼなどを貼付し、ガーゼとびらん部が固着することを防ぎます。指趾間が癒着する危険のある病型では、指の間にワセリンガーゼを挟んで予防に努めます。抗生物質含有軟膏の長期間の使用は耐性菌(抗生物質に対する抵抗性をもった菌)出現の原因となりますので、注意が必要です。びらんや潰瘍の悪化が認められた場合は、真菌(かび)や細菌(ばい菌)感染の合併、皮膚がんの出現などの可能性がありますので、早めに医療機関を受診して下さい。
通常のガーゼは傷とくっつきやすいため、ガーゼ交換をする際に痛みを生じ、また新しく再生した皮膚を剥がしてしまうことがあります。傷に固着しづらく、また持続的に貼付可能である特殊な創傷被覆材(ドレッシング材)が開発され、表皮水疱症患者に生じる難治な潰瘍、びらんにも有効であることが分かっています。

瘙痒が強い場合には、症状をとる目的で止痒剤(かゆみ止め)を使用することもあります。

劣性栄養障害型表皮水疱症のような、重症例では栄養不良となることが多く、エンシュアリキッドなどの栄養剤の経口摂取や点滴や経鼻にて栄養を補給することがあります。

治療とは異なりますが、遺伝カウンセリングも行われています。また近年、表皮水疱症患者会(表皮水疱症友の会 DebRa Japan)が発足しました。症状や治療法、医療福祉情報、心の悩み相談などの情報交換を行っています(http://debrajapan.com/)。

この病気はどういう経過をたどるのですか

多くが慢性で難治性であり、水疱の治癒と新生を繰り返しますが、病型によって予後は大きく異なります。

(a)単純型表皮水疱症

多くは加齢とともに軽快します。しかし、筋ジストロフィー合併型や幽門閉鎖合併型などの重症型も存在します。

(b)接合部型表皮水疱症

重症型は、乳幼児期から小児期までに死亡することが多いですが、軽症型では、限局的に水疱、びらんを繰り返すものの、普通の社会生活を送ることが可能です。

(c)栄養障害型表皮水疱症

優性型では、加齢とともに水疱・びらんの新生は減少してくることがほとんどです。粘膜が障害されることもありますが、多くは軽度であり、生命に影響を与えることはほとんどありません。

劣性型では、症状の推移に個人差があり、7型コラーゲンが全く作られない重症型では水疱やびらんが汎発し、皮膚付属器(頭髪、爪)や歯などの形成異常を認めることもあります。